「所長!
やりましたよ!

先ほどの会議で販売実績が、前年比の10割増と出ました。
やはり、所長の読みは的確でした!」


いじけていた所長に、書類が手渡されると
奴は瞬時に、有能なビジネスマンのような顔になる。

一瞬前まで、指ついていじけていたくせに!?



「10割増? 目標は20だ。下半期で巻き返せ」

「もちろんです、社員一同燃えてますよ! "びっくりぱな"は、爆発的ヒット商品ですから!」


びっくりぱな……

どこかで、聞いたことあるぞ?

そうだ、テレビCMだ。


所長が、いじけていた壁の脇には毎日テレビCMで紹介されている゙びっくりぱな゛のポスターが貼られていた。

確かに、手品グッズだ。

手のひらに隠した鼻が、「鼻が立派になっちゃった」というキャッチフレーズと共に飛び出す仕掛けだ。

一昔前にも流行ったんだよ。


あの時は、耳がデカくなった。


『パクりじゃねーの?』って俺が言うと、李花は『コレ耳よりウケるよ! 李花も欲しい!』って爆笑してた。




「淳一くん、今年の夏には
びっくり鼻から更に花が飛び出すグッズを販売するんだよ。

さあ、ついて来て
君の部署を案内しよう」

話かけてきた男は、所長に深々と頭を下げた。


本当に、手品グッズを販売する会社だったのか?