「まあ、いい
とりあえず事業所内を案内しよう」


所長は、ジャケットの襟を正してセラミックの扉を開く。


俺から先に部屋の外に出るよう促した。

ユカリさんは、部屋に残るようだ。


こういうの、普通秘書の仕事だよな?


違うのか?




男前所長と一緒に部屋から出ると仕切りのない社内全てが見渡せるフロアーに出る。

所長を横目で見て、頬を赤らめた女性社員が数人いた。

所長がその人たちに、ヒラヒラと手を振り人懐こい笑顔を見せると小さく黄色い悲鳴があがる。

ムカつく……なんかムカつく。



「我が社は、

営業部
企画部
経理部
広報部
管理部
総務部

それから販売促進部によって構成されている事業所だ。

ここまで質問はないかな?」


部屋の外は変わらず、頭の良さそうな奴らが忙しそうに働き回っていた。



「質問っていうか、何言ってんのかさっぱりわかんねーよ。

部って何だよ?」


「うーん、なかなか鋭い質問だった。部って何だろう?」


「オマエ所長だろ? 一番偉いんじゃねーのかよ!」


「偉いんだけどさ。
淳一くんは、タメ口だし。秘書は、あの調子だし

なんか自信なくしそう……」


所長は、白い壁に指を突いていじけだした。

マジで、変な奴!


その姿でも、黄色い悲鳴は止まない。