それを、あんな事くらいで終わらせたくない。

けれども、李花の携帯を何度呼び出しても応じてくれることはなかった――



「おかえりなさい!!
真部くん、待ってたよ!」

ボロアパートの入り口には、大家さんのオヤジが待ち構えていた。


「大家さん、今月の家賃お支払いの件ですか?」


家賃は自動引き落としだ。毎月決められた日にちに、ぴったり四万九千円が引き落とされる。

引き落とし日は、給料日後で俺は今まで一度も滞納をしたことがなかった。



「違う、ちがう~家賃の話じゃないよ! あっはは、なんていうか笑いの止まらない話でね」


オヤジは、バシバシと二回俺の肩を叩いてから

腹を抱えて笑い出した。