三階には、田中くん(仮)と須藤くん(仮)が待っていた。

二十億は、そこで俺たちの手の届かないところに行ってしまった。


俺は、急いでエレベーター扉を探る。
どこかに基盤があって、そこを開ければ扉を操作できる。



「あった! これだ」

運良く鍵はかかっていない。


「はやく、助けてー! 中は真っ暗なのよ!」

「うるせー! 今やってるから、待ってろ!」


ゼンは、ヒューと口笛を吹くと「淳ちゃんてば、どS! さいてー」と楽しそうな声をあげた。

「おまえ手伝え。背が高いんだから」

基盤の蓋を外して、中を覗く。


「はい、淳一様の仰せの通りにいたしましょう」


ふざけ過ぎ……

緊張感がまるでない。



「そこの赤いボタンだよな……多分」

「これか? 解除って書いてある」

多分、自信ないな。
間違えてエレベーターが落下しても困る。



「そう、それ押してくれ」

「佐伯社長!?」


下の階に降りたはずの社長が基盤を見ている。


「間違いない。扉を開くにはそのボタンだ。
君は一番背が高いから押してくれ」


「了解」


パチンと音がして、ロックが外れる。


「あとは、手動で開けるけど……変な場所で止まっているかもしれないから落ちるなよ」

佐伯社長の注意を受けて鉄の扉に指を入れて慎重に開く。
アイツも助けてくれて、扉は確実に開いていく。


「初めての共同作業だな……淳一」


「嬉しくねーよ」



「ははは、やっぱ淳一のそういうとこが好きだ」


嬉しくなんてない。
コイツは、すぐに俺の前から消える。


「そいつと、仲がいいんだな? 淳一」


「仲が悪いんすよ! 社長」


アイツは、ニヤニヤ笑っていた。
扉はゆっくり開く


エレベーターの箱は俺たちの腰の位置で停止していた。



「こっちは、レバーを引けばすぐに開く。危ないから
下がって」


社長は、懐中電灯でレバーを確認した。
頼りになる人だ。アイツと違って安心感がある。