「申し訳ございません。今夜は内密な取引があります。
頭取はアナタのことを信頼しているからこそ、この場での取引を望んだのだと思います」
「そう……」
愛人さんは、黙り込んだ。
「いいわよ。好きにして……元々その部屋は、あの人のものだし」
「ご理解感謝いたします。これを」
「こんなもの要らないわよ! バカにしないで!」
バシっと何かが落下する音が聞こえて、女のヒールがエレベーターのほうに消えていく。
「ホテルまで、送ります」
男も後を追いかけたようだ。
そっと扉を開く。
誰もいないことを注意深く確認した。
「よしっ」
ピザを水平に持って、帽子を深くかぶった。
やべっ時間がわからねー。
俺は、急いでお隣さんのインターホンを押した。


