────ピンポーン

『真部さ~ん、お待たせしましたー
ピザージャでーす!』



「わぁーい、ピザがきた!」

李花は、スキップで廊下を跳ねる。

ピザージャの配達員は、Lsizeのピザを二枚差し出した。

「お待たせしました。新月の夜のキャンペーンの無料ピザでーす」


「あれ、一枚しか注文してないよ?」


「キャンペーンでは、一枚注文いただいたお客様に二枚プレゼントするんです」


ニコリと笑った兄ちゃん。
どこかで見たことあると思ったら田中くんか、鈴木くんか、須藤くんだ。
名前は不明だけど、毎日会っていたんだ顔を忘れるはずがない。

上にのっていた一枚のピザが李花に手渡される。

片足で器用に玄関扉が閉まらないように押さえながら、下の一枚を俺に渡した。


「俺たち、配達員は玄関扉が閉まらないようにお客様にピザを渡すんですよ」


にこやかな瞳の奥がギラリと光る。


「玄関扉が閉まらないように……ね。わかったよ」


李花は、ピザに夢中で俺たちの会話に気がついていない。



「十五分四十七秒後だ」


配達員の笑顔は消えた。



「了解」


俺が頷くと、また笑顔になる。


「ありがとーございましたー」

そして、扉を閉めた。