「じゅんちゃん、李花だけど
雨大丈夫?」
「ダメ、濡れた。でも別にいいんだ……違う仕事探すことになったから」
「濡れたら、ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃうよ!」
「ああ、わかってるよ」
うざったい……と舌打ちしそうになるのをガマンした。
李花が悪いわけじゃない、李花は心配してくれている。
「李花、今ねお布団干してて雨が降ってきたから慌ててしまったの」
だからなんだよ……今度は舌打ちがでた。
だけど、李花は続けた。
「お客様用の畳んであった羽毛布団三点セットも干したの。掃除機もかけたかったから……そしたら、お手紙が出てきたの」
「手紙? なんて書いてあるんだ!」
アイツからか?
「白い封筒に入ってて『親愛なる淳一へ』としか書いてない。封筒には、封っていう大きいスタンプが押してあるから開けちゃいけないと思って電話したんだよ」
「そうか……李花ありがとうな。今から、そっちに帰る。その手紙は、大切なものだからなくすなよ」
「わかった! 待ってるね」
地下鉄の駅に走る。
一気に降り出した雨のせいで、革靴が変な音をたてた。
アイツからの最後のメッセージってわけか……


