完売か……
アイツは、それも狙ってたな。
『完売&増産は、商品の付加価値を上げる。足りないくらいに作っとけ』ってサラリと命令してた。
アイツは、そういう奴だ。
立ち止まった俺の頭上に一滴二滴と雨が降ってきた。
「雨だ! はやく会社戻ろう」
「そうだね……ぬれちゃう!」
OLたちは、休憩をやめて走り出すとすぐに雑踏に姿を消した。
ここは、オフィス街だ。
皆が、忙しそうに建物や地下鉄の入り口に走り込む。
時間を持て余していて、雨に濡れても大して問題ないのは俺くらいだろう。
自動販売機で缶コーヒーを買うと、雨にうたれながらOLたちが座っていた場所に座る。
もう、何もできない……
トリックスターズに拒否されれば手も足も出ない。
あそこは、要塞だ。
入り口は一カ所しかない地下だ。
俺に残された道は、今までの事は忘れて職安に行って仕事を探すことだ。
そうだ。
そうしよう。
職安だ。ハローワークだ。
また、建設現場で働けばいい。
雨に濡れて重くなっていく無敵スーツ。
こんなもの、俺には似合わない。
スーツの内側では、携帯が小刻みに振動していた。
「もしもし……」


