Tricksters



ビルヂングを見上げる。
空は、どんより曇り空だ。

今にも雨が降り出しそうだ。


「どうすればいいんだ? 俺」


地下鉄の駅に向かって歩く。

途中でムシャクシャして、なんでもいいから殴りつけたい衝動にかられながら
奥歯をギリギリ鳴らして歩いた。



もう、俺は用なしってわけか。

自分の本性バレて、企みの邪魔になりそうな奴は排除ってわけか。



アイツ、本気の本気の本当にムカつく!

「ああーっ! ムカつく!」


転がってた空き缶をグシャと踏みつけた。

潰れた用なしの空き缶。

俺は、それを掴むとゴミ箱に投げ捨てる。



『シャパシャパシャパ♪ シャパネット♪』


耳障りな音が聞こえてきた。


「やだぁー、そんな着メロ
どこでダウンロードしたの?」

「知らないの? 今、シャパネットガタガタの商品買うと無料でダウンロードできるんだよ」

「へぇー、そうなんだ! 何買ったの?」


ゴミ箱の脇にあるベンチで、休憩中らしきOLが缶コーヒー片手に会話を楽しんでいた。



「これこれ」


手にしていたのは、あの“もっぷちゃん”ストラップ。
色は、ピンクだ。


「部屋を掃除するのに買ったの。ゴールドストラップ狙ってたのに外れちゃった」


「へー、でもピンク可愛いじゃん!」


「そうでしょー? 中身みるまで、ドキドキだったよ」


「でも、あれ使える? 面白いし、可愛いけどモップとしてはどうなの?」


「使えるよ。だって、フィーチャリングDEMEKINだよ? モップのことならDEMEKINへだよー」


「やっぱ、そうなんだー! 私も買おうかなぁー」


「残念でした、完売だって」


「えーっ!」