「ヤミ金に手を出したのだって、ここを作る為の新しい重機が必要だったからだ。


今のご時世、銀行も貸し渋りばかりだ……」



社長の声が震えた。
泣いてるのかと思って俺は黙ってた。



この場所は社長にとっては、悔しさと後悔の場所なんだろうな。


辛いんだ。



俺だって、辛すぎる。



辛すぎる現実が、しんと静まったこのビルだ。



「朝から、ごめんな……淳一。

暗い話して
でも、ここに来ると次は絶対同じ失敗しないようにって自分に言い聞かせることができる。


だから、淳一にも見せたかった。
来月には、ここは居住用のマンションに建て直される」


「居住用マンションか……」


取り壊されるってわけだ。

一度も使われずに……



「ここを買い取る予定だった企業ってなんて会社だったんですか?」


社長が、振り返る

その顔は、勇ましくて
いつだって頼れる男

佐伯社長。



「フィーチャネス証券だ」