所長は、涙を拭う真似して
またカウンターテーブルに伏せて「酷い~」と泣き真似をした。


「ゼンさん、わかった!
DAVEKOZって人でしょう!」


「正解! そこに俺の好きな、黄金比を追加したのがアドレスだ。

簡単だったろ?」

だから、全然泣いてねーじゃん


智たちは、「黄金比ってなんだよー」と叫んだ。



「さて、我々はそろそろ失礼するよ」


「え、我々?」


ゼン所長に、腕を掴まれて
俺も失礼しなきゃいけないらしい、と知った。


まだ、智と飲みたかったのに



眞子と奈々は悲鳴に近い声をあげる。


「これ、俺と淳一の分
残りは適当に使って。

淳一、行くぞ」


「ったく、自分勝手だな。智またな」



――夜道を所長と並んで歩く。

すれ違った女は、大抵振り返って所長に見とれていく。


「タクシー捕まえてくるか? お前脅迫状送られてきたんだろ? 刺されるぞ」


所長は、むっとした顔をして
そのままスタスタ歩いていってしまった。


「どこ向かってるんだよ!」


そっちは、俺んちの方角だ!