「俺に脅迫状送りつけてきた『ヤミ金業者』は、フィーチャネスの経済支援金十億を俺が奪ったのは知っていて

武尊之の二十億の情報を掴んでいるのかわからない。なんせ、正体不明だ」

額に汗が伝う。
冗談だと言ってくれ。

コイツ何する気だよ?

周りに聞き耳立ててるやつがいないか
俺は怖々と店内を見渡す。

智たちは、携帯の操作に夢中だし
居酒屋の店長は、さっきのコイツの悪態のせいで遠巻きにガン付けてた。

他の客も、盛り上がってて俺達の話に耳を傾けてる奴なんていない。



「タカシくんは、多分同業者だろ
油断するなよ」


「デメキンの清掃員じゃないのかよ?」



「清掃員だろ。俺と一緒で"裏"があるだけだ。ヨシミちゃんには、俺の部下が護衛についてるし。

武尊之の頭取の愛人宅の隣には、淳一が住んでるし

あとは、いつ受け渡しがあって
その金がどう流れるか……

ヤミ金野郎に気づかれずに、どうやって二十億奪うか……」


ゼン所長が眉をしかめた。


「俺? 愛人宅の隣?」


って、もしかして
もしかすると……

この前の歓送迎会の後に、うちのマンションの隣に入っていった奴が

武尊之の頭取?

休日のあの時間に自宅に戻るサラリーマンなんて珍しいと思ってた。まさか、あんな昼間から愛人宅に通うためにマンションがあったのか?

ろくな奴じゃない。


それに比べて
この男、本物の詐欺師だ。