それで、俺の腫れた顎に驚いて手当てしてくれているわけだ。


優しい人だ。


ついでに今日一日の出来事も事細かに説明した。

もちろん、俺がユカリさんを気になってると内藤部長に漏らしてしまったことは言ってない。



ユカリさんは黙って聞いてくれていたけど……


「ユカリさん、泣いてましたか? 目が……」


ユカリさんは慌てて俺から視線を反らす。


だけど、その瞳は充血していてふちが赤くなっていた。


「泣いてない。コンタクトレンズがズレちゃって、痛くて。アハハ」




ユカリさんは朝から、ずっと泣きそうな顔をしていた。


所長がラブホ街で女に追いかけ回されたことが原因だろうな。

作られた無理した笑顔見せてたし、脅迫状は届くし


きっと、心中穏やかじゃない。



「所長は?」


「佐藤さん達と出かけたわ。『今日はユカリは留守番してろ』って私、秘書なのに戦力外通告されちゃった

タオル取り替えるね?」



冷たいタオルが離れて、俺はただ動けずに所長室のソファに座っていた。