「だってさ……
ミエちゃんとミユちゃんが友達だったなんて知らなかったし……」
蚊の鳴くような、細い声。
グテッとしたまま動かない所長。
「休憩三時間、第三ラウンド……KO負け」
なんだよ、ソレ
軽く自慢話だし
自業自得じゃねーか。
「ユカリさん、今日の仕事って?」
「まずは、着替えしてくれる? その格好だと不味いのよ」
ユカリさんは、憎らしげに所長を睨み付けてから俺に笑顔をみせる。
「サイズは、酔いつぶれてた時に測らせてもらったわ」
なんでだよ。
ユカリさんなら、別に意識あるときでもいいのにな……ちょっと残念。
「あー、体ダルおも~」と唸る所長を横目に、衣裳部屋みたいなとこに案内された。
ここも所長室の中から直接行けて、入り口は観葉植物で死角になっている。
「ユカリさん、なんで警察官とか警備員の制服がこんなとこにあるんすか?」
「あ、それ? お仕事用よ。
そのうち、独自の潜入捜査する時には淳一くんにも着てもらうかもしれないわね」
「独自の潜入捜査って?」
コスプレとか、そーいうものじゃないんだよな?
生地もしっかりしていて、本物っぽい。
「楽しいわよ~潜入って
私、大好き!
はい、今日はスーツ姿の普通のサラリーマン役。
お遊戯会みたいでしょ?」
「……はい」
お遊戯会かどうかは、わかんねーけど
今日も清楚なお姉さんは、若干ずれてる。