先生が私を忘れてしまっていたことをいまだに信じられずにいた。
「千草ー帰ろ♪今日はどっか寄ってく?」
下駄箱で藍ちゃんが私の悲しそうな顔をのぞきこんできた。
「うん…帰ろう。ちょっと遠回りして」
藍ちゃんは了解!と笑って靴を履き替えた。
藍ちゃんはいつも私のことを見守ってくれていた。
そんな藍ちゃんに私はいつも甘えてばかりで……ごめんね。
「あ、千草数学のプリント持ってきた?」
「…あ。」
数学のプリント、机の中に入れたままだった。
今日はずっと先生のことを考えすぎて、頭が働かなかった。
「藍ちゃんごめん!すぐ取りにいくから待っててー!」
私はもう一度靴を履き替えて階段をのぼった。
「気を付けなよ~?」
後ろからは藍ちゃんの陽気な声が聞こえた。

