「わ、私…っ急いでるから、先帰る……っ」



 丁度角に差し掛かって、民家に遮られていた西日が私の目に飛び込むように入ってくる。


 駅方面へ駆け出した私に続いて曲がって来たであろう彼の姿を確認もせずに、私は光の中へと走っていく。



「藍っ」



 雨が、地を打つ。傘を打つ。穏やかな音は、一瞬。





「―――――好きだ……っ!」





 消えた、気がした。


 走る、走る。私は走る。




 ねぇ、私の正面の、霧雨を照らす太陽。



 聞こえた気がしたのは、気のせいですか?


 ......hear it to last.


-終-