私の水玉の斜め上に、彼の紺無地の傘が止まる。靴の中で足が違和感を感じて、爪先をとんとんと鳴らす私を、彼は隣で待っている。



「……癖だよな」



 何かを思い出すように、目線より少し上を見て、太陽はぼそっと呟く。


 私は、気づかれた時の羞恥も忘れて、彼を見つめる。



「本当藍って、昔から変わらねーの」



 ……太陽も。眩しい笑顔も、優しい態度も、変わらないくせに。


 変わっていないはずなのに、昔と違う。私の心臓を、ぐっと掴んで締め付けて。


 何だか見ていられなくなって、私は太陽の反対側に、視線を彷徨わせる。


 これじゃぁ、無視をしたみたい…そう思って何か返そうとするけれど、どうにも出てこない。


 私が黙り込むと、直ぐに静かになって、雨が傘を小さく突くような音だけが響く。


 細く、細く。


 灰色をした雲は、黙々と私たちの頭上を通る。その遅きことと言ったら、亀を遅いなんて言ってられない程。


 二つの傘が時折ぶつかる距離感は、私の心拍数を限界まで上げるのには、十分すぎて。


 喉が絞まって息が止まりそうな、そんな感覚を覚えて、私は。