「誰?」
表情一つ変えずに、彼は薄く口を開いて言った。
「えっと、…亜暉。」
たどたどしく答えるあたし。
彼はまた顔色を変えず、何も言わず、あたしをじっと見る。
忘れられちゃったかな?
「…あぁ、保健室の。」
「良かった、覚えててくれたんだ。」
何言っちゃってるんだろう、あたし。
「まぁ一応ね。」
一応って…。
言葉だけじゃなく、態度も、表情も、全てが挑発的だった。
普通、これを“生意気な後輩”って言うのだろうか。
いつものあたしなら黙ってなかったのかもしれないけれど、今のあたしはそれどころじゃない。
挑発的な視線を向けられる度に、胸が高鳴る。
ドキドキする。
「じゃあ俺、行くわ。」
そう言うと彼は体の向きを変えてさっき歩いて行こうとした方へ進もうとした。
「待って!」
なんだか、名前の付けられない衝動が私を揺さぶった。
もう一度私の方へ体を向ける彼。
「連絡先、教えて下さい。」
向こうは後輩なのになぜか敬語になってしまうあたし。
「良いけど。」
彼はそう言って、連絡先を私に教えた。

