君だけは離さない





起こさないようにそっと側に行き膝を曲げて顔を近付けた。

涙の跡がくっきり残っているのに気付き思わず顔を背けてしまった。


彼女が涙を流す原因は間違いなく自分だからだ。



指先で、そっと涙の跡に触れた。


そこで別の事に気付いた。



昨日触れた時は温かかったのに今は冷たい。
ノースリーブの白のワンピースを着た美桜の腕はとても冷たかった。


季節は春とはいえ、まだまだ肌寒い。一体いつからここに居たんだ?


響は横抱きにして美桜を抱き上げて室内に入りベッドに寝かせた。
本当は抱きしめて温めてやりたかったが目覚めた彼女が自分に怯え、拒絶する姿を見たくなかった。




「美桜……」




小さく消え入りそうな声で彼女の名前を呼ぶ。





「お前が好きなんだ。自分でもこんな方法でお前を手に入れようだなんて間違ってるって分かってはいるんだ。だが抑えられない……お前がどうしようもなく好きなんだ。美桜。ごめん……俺が好きになったばかりに傷つけて、ごめん……」




今にも泣き出しそうな顔をした響は優しい手つきで美桜の髪を撫でた。




「愛してる……」