君だけは離さない





恐怖で涙を浮かべながら響を拒絶する。




そんな美桜の姿に響は衝撃を受けた。何故、彼女がここまで怯えて自分を拒絶するのか。
答えは昨日の自分の発言にあったのは明らかで。彼女から見ると自分はただの犯罪者だろう。

自分を拉致し監禁。逃げれば殺すと脅してある。そんな相手に恐怖感を抱かないわけがない。




どうすれば――――





どうすれば………君は俺の側にいてくれる?





「何もしないから……だから、そう怖がるな……」





響は静かにそう言った。悲しい笑顔を浮かべて……




「仕事に行って来る。帰りは遅いから、その間に橋田菊子という者がお前の世話をする事になってる。信頼出来る者だから安心していい。何でもその者に言え」





響は名残惜しげに美桜の髪を撫でると部屋を出て行った。




響が出て行くと全身の力が抜けてベッドに横たわった。




怖い。あの人が怖くて……
でも、あの人はどうしてあんなに寂しそうなんだろう……。