でも
「ねっ!紺野、何か良い恋愛ものの本教えてよっ」
「はあ?」
笑顔で言うと、紺野は何言ってんだとでも言うかのように目を丸くして捲り続けていた本を閉じた。
「…暁、本読むの?」
「読まないけど、恋愛小説って前から興味あったの!」
「そうなんだ……っつかさっきの俺の話聞いてた?」
「え?聞いてたよ?でも私どれがいいかとか全然わかんないから。だから、ねっ?紺野お願いっっ」
両手を合わせて顔の前で懇願すると、紺野は困ったように「えー…」と小さく声をもらした。
よし、あと一息…!
…と、思った時。
ピリリリリ…ピリリリリ…
ん?――電話??
不意に、紺野の携帯が鳴り始めた。
「あ、俺か。」
紺野はベッドの上にあった携帯を手に取り、画面を見たあと私に出ていい?と目で聞いてきた。
それに私は少し残念に思いながら、いいよという意味をこめて頷く。
「何?」
電話に出た紺野を横目に、何だか淋しくなってしまう私はおかしいのかな。
いいよって言ったのは私なのに。
ってか…タイミング悪い。
もう少しで、きっと紺野は了解してくれただろうに。
あーあ。誰だよもう…
「っまじで!?」
「っっ!?」
部屋に響いた突然の紺野の声にびっくりして、思わず体をびくっと揺らしてしまった。

