「紺野っ………」
ぽたぽた、零れる。
「…っうう、う゛ーっ…」
…恋愛小説だ。
二冊とも、恋愛小説。
紺野が読まない、恋愛もの。
―――なら、誰が読む?
「う゛〜〜〜〜〜っ…こんっ…の…っ…」
…私、だ。
私のためだ。
今日持ってきたけど…
あれは、この事を言っていたんだ。
わざわざ私のために探してくれたのかな。
好きでもない、恋愛小説なのに。
あんな、その場の勢いで言った、なんてことのない私のお願いだったのに
紺野は、考えてくれてたんだ。
叶えて、くれた。
……紺野。
紺野、紺野、紺野。
すき、好き、好きだよ。
「…〜〜〜〜っっ紺、野…!」
ぐっと足に力を入れて一気に立ち上がって
本を大事に抱えて、走りだした。

