き…キーンって…!
耳が壊れる…!!
『30分もどこほっつき歩いてんのよ!!!あんたなら10分で帰ってこれるでしょ!!?』
「ゆうちゃん耳がぁーっ」
『お前の耳の事情なんて知るか!!!』
「うあー!酷い!」
『黙れ!!!早く帰ってこい!!!!』
「っ!ちょ、ちょっと待ってっ…!ゆうちゃん待って!あの、あのね、今私っ…」
電話の向こうで怒りまくっているゆうちゃんにストップを掛ける。
今はまだ帰れない。
だって私、今は…
「私今紺野を――――…」
その先の言葉は、どこかへ飛んでいった。
『――え?紺野くん?あんた紺野くんと一緒にいるの?』
ゆうちゃんの声にも、反応出来ない。
だって、なんで?
紺野の家は、そこじゃないよね?
「……紺、野…?」
大きな道路を挟んで反対側にあるまだ新しい綺麗なマンションに、何故君は美人な女性と二人で入っていくの?

