紺野。
紺野見つけた。
あれは絶対に紺野だ…!
紺野は私には気付いていないらしく、本を元の場所に戻したかと思うと、すいーっと綺麗な歩き方をして店の外に行ってしまった。
「っ!待っ…た紺野っ」
条件反射と言うものなのか。
私は直ぐ様、紺野の後を追って店を出た。
紺野、紺野。
ねぇ紺野、
「…うわ、やば…見失った……」
出て直ぐに紺野は私の視界から消えていて、尾行やその他コソコソすることが苦手な私は案の定紺野を見失う。
うう、名前呼んで呼び止めればよかったかも…。
無視されてたかもしれないけど。
辺りを見回すと、大きな道路に挟まれ私と反対側にあるまだ新しい綺麗なマンション。それにコンビニと、…と色々あるけど、やっぱり紺野はいない。
…でも紺野、何で本屋さんにいたんだろう。
さっき電話で今日は駄目だって言ってたのに、な。
…もしやあれか。
本が読みたいから今日は無理ですとかいう普通にはありえない理由ですか。
ああ有り得ると思えることが悲しい。
紺野の中ではやっぱり私<本なのかもしれない。
…じゅーぶん分かり切ってたことだけどさ。
(私って何か惨め…)

