「あ、あのぅ…」
「っ!」
控えめに掛けられた声にびくっと反応して、その主に視線を移す。
そこには、先程の店員。しかも何だか困り顔。
もしや結構呼ばれてた、とか?
「は、はい!」
慌てて応じると、店員はホッとした顔をして二冊の本を持ち「こちらでよろしいでしょうか?」と聞いてきた。
予約したのはゆうちゃんだから私が知るはずもないわけなんだけど、そんなとこを気にしてたら買えないので直ぐ頷いた。
料金を払い品物を受け取って、任務達成できたと一安心。
それを大事に抱えて、店内のなかをうろうろ。
するけども、…やっぱり暑い。ほかほかする。いやむしむし?
(用も済んだし、帰ろうかな。)
早足で入口まで向かう。
そこの棚を曲がって、真っ直ぐ――――
(あ、れ…?)
目を、見開く。
曲がったところの、正面。場所は勿論小説コーナー。
一冊の本を手にしてじっと立ってる姿。
あの細身のジーンズに暗い赤のセーターの上に羽織るジャケット、それに濃いグレーのマフラー。そして、黒縁の眼鏡と…切れ長の瞳。
誰よりも輝いて見える…
(こっ、紺野――――!!!?)
紺野、だった。

