「…。」
「アキーっ」
「…。…ん?」
名前を呼ばれたかと思うと、突如部屋のドアがバンッと大きな音を立てて開いた。
ぎょっっと目を丸くすると、そこにいたのは鬼。…うそ、おねいさま。
「ゆうちゃん…!何!?」
「あんたねぇ!さっきっから呼んでたの気付かなかったのっ!?」
「え゛っっ嘘ごめん呼んでたの!?」
「呼んでたよ!」
ゆうちゃんはずかずかと部屋に入ることはせず、ドアの所に手をついて壁に寄り掛かっている。
ゆうちゃんはわかっている。私が逃げようとすることを。…だからドアの所に立ってるのね。
ゆうちゃんは、私のお姉ちゃん。
私の通ってる高校の三年生だから、ゆうちゃんも今日はお休み。
いつもだったらゆうちゃんの彼氏さんと遊びに行くはずなんだけど、ゆうちゃんは受験生だからそんな暇はないんだって。
「何してんの?30分以上も部屋から出てこないし。心配したじゃない。」
そういったゆうちゃんの表情は…うそだ、明らかに心配してたような顔じゃない。
「…。…ゆうちゃん私今日は駄目だよ」
「え?何アキ。今のあたし聞こえなかった。何?」
「……。…何でもないでぇす」
ゆうちゃんは、強引だ。
生粋の女王様気質なんですこの人は。
私なんて脇役のなかの庶民Aぐらいしかないのに。

