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体育座りで携帯の画面をじぃっと見つめて、画面に映る文字にまた溜息。
紺野
両端をハートに挟まれたこの名前に、下には彼の電話番号。
もう、30分もこのままの状態。電話を掛けようか掛けまいか。悩みに悩んでおるのです。
今日は平日だけど私の学校は開校記念日でお休み。
なので、お家に引き籠もってたんだけど…
何だか、無性に紺野に会いたくなったのだ。
紺野、今日暇かな。
それとも何か用事あるのかな…。
…やっぱり忙しいかもしれない。休みの日だもん。私は暇だけど。
もわもわと浮かぶ思考に、小さな溜息。
自分の都合で言うのは…駄目だよね。
紺野は、そういうの絶対に嫌がる人だし。
(…っ、でも…)
そんな否定的な考えがあっても、…結局会いたいものは会いたい。
「…、」
電話。
しても、いいだろうか。
――自分の欲に負けた私は
躊躇いがちに人差し指で通話ボタンを…押してしまった。
――トゥルルルル…トゥルルルル……
呼び出し音が続くごとに、どんどん押し寄せる後悔。
それと比例して強くなっていく鼓動。
何だか緊張して、体がガチガチになる。思わず、生唾を飲み込んだ。
で、出るかな。出ないかな。
…どっちでも良いけど…いや良くないけどっっ……―――やっぱり早く出てください紺野さん……!!!!
その願いが通じたのか。
『――はい?』
「っっ出た!!!」
紺野が数十回目のコール音が終わったあと、やっと電話に出てくれた。

