「っありえないでしょ!?私を置いてまで本って…どんだけ本バカなんだよーーーっっ!!!!」
「まっ…まぁまぁ抑えて抑えてっ、ねっ?」
エミに苦笑混じりで宥められ、しぶしぶ席に座り直す。
周りから異様なモノを見るような目で見られてるのに気付いても、落ち着くことはできなかった。
――朝っぱらの教室、中学からの親友のエミカと会話をしていた私。
…正確には会話じゃなくて、相談と言う名の暴露愚痴大会なのだけれど。
「ひどいと思わないっ!?私ほったらかしだよ!結局一時間経っても帰ってこないからもうヤになって帰ってやったわ!!!」
「…読んじゃったんだね紺野くん…」
「だと思うけど!!!絶対私のこと忘れてたんだよ!!!」
昨日、気付いたときには部屋からいなくなっていた紺野。
それでも、早く帰ってくるだろうな…と思ってそのまま紺野の部屋で待ち続けたこと一時間。
…紺野くん、帰ってきませんでした。
ありえない。
いくら何でも酷すぎる。
絶対私のことなんて一緒にいたことすら無かったことにしてたんだ。
存在すら本に負けたんだ私……!!!!
「うわーーっっっ悲しすぎるーーー!!!」
「そんなに叫ばないでってば…。」
苦笑いを通り越して呆れ混じりの溜息をついてまで言ったエミに、私の壊れやすいハートに罅が入る。
「うっ…だって…だって……っっ」
「でもさ、しょうがないよ。エミ分かるもん、紺野くんの気持ち。」
紺野の気持ち……??
その不思議すぎるワードにクエスチョンマークが脳内に何個も敷き詰められる。
エミはそんな私に向けて、にっこりと可愛らしい笑顔を浮かべて
「恋人よりも、本を取りたくなる気持ちっ」
「!!!!」
私の罅の入ったハートを、見事に粉砕した。

