「あの…」

「…」


アタシは、自分の名前を知らない。
その時点で未完成。
嫌だ
嫌だ
嫌だ。
というわけで、アタシは今、アタシを作った人の息子の元に来た。
アタシの名前を知ってると聞いて。
だが、この男。
アタシが来ても、何もしゃべらないどころか、動きもしない。

死んでいるのか?


「あのっ…」

「名前でしょ?」


!……しゃべった。

一人関心して、唖然としていると、男が椅子から立ち上がり振り向いた。
きれいな、顔立ちと、きれいな瞳、そしてミルクティー色の髪の毛。
でもなぜかイレギュラーに感じるのは、
目の色が灰紫(アッシュモーヴ)だからだろうか?


「…君の名前は、ないよ」

「…え…っと、アタシは、ここで名前を聞けると聞いたのですが」

「俺“アタシ”って嫌いなんだ」

「何をおっしゃっているのです?」

「君には“私”が似合う」


“わ”と“あ”の違いが嫌らしい。
彼は口元だけ笑って、アタシを見た。


「言ってごらん、未完成人間さん」