「頼む、頼むから俺の勘違いであってくれ……」


優人は雨が降っているにも関わらず、傘を差していない。


理由は、優人が一生に一度の急ぎの用事があるからだ。


そしてその急ぎも自分の思い過ごしであってほしい。


優人はそう考えながら懸命に走った。



事故が多発している丁字路は優人の家から一キロ弱のところにある。


女の憂美だからそんなに走るのは速くない。


そう思っているからこそ、このタイミングは不味いのである。


優人の家から直進を右折したところにそのT字路は本来なら見える。



だが、今は暗闇に包まれている。


右折しても人は見当たらない。