「あぁ。そこにいる」 「じゃあ、そこから真っ直ぐに走って二つ目の信号を右に曲がってそこをさらに───」 「待て待て。覚えれねぇよ。そのまま電話繋げてナビしてくれ」 優人にとって覚えることは大の苦手だった。 「うん分かった。じゃあ、しゅっぱ~つ!」 憂美はなぜか気分が良かった。 これで今日何も起こらなければもっといいのに、辺りは暗くなっていくばかりだった。 まるであの現象が起こる予兆みたいに。 優人は自転車のスピードをあげた。