「私、本当の名前は『野花咲』なの。それでその……ゆうちゃんが初めてじゃないの。付き合ったのが」 「それで?」 もう優人は理解している。 今、目の前にいるのは憂美ではない。 自分が好きだったのも憂美ではない。 あの日の誓いも憂美のものではない。 「それで、本当の私は一年半前に消えてるの。『小林憂美』の体になった時に、昔の自分を見に行ったの。でも……いなかった。近所の人に聞いてもいなくなったって言うし」