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保護者と地域の人たちが集まり人口密度も年齢層も高まれば、いつもの学校も姿を変える。

どこか浮ついた空気、なぜか高まるテンション、皆がわくわく心を躍らせているのは明らかで、

よく晴れた文化祭の日を見守る空が正に青春という感じで爽やかだ。


午前からお昼を挟んで二時までは自由行動で、一年生の展示や二年生によるアトラクションなどを見る時間に決められており、

穂ノ香は親友の亜莉紗と二人、何をする訳でもなくプラプラと歩いて回った。


とにかく退屈だった。
弾けたグループはデジカメ片手に探索をし、他クラスのメンバーと合流しはしゃいでいたり、

カメラマンを追いかけて卒業アルバムに載せてくれとせがんだり、

大人しいグループはグループで、美術部の絵を眺めたりパネルクイズに挑戦したり小規模に盛り上がり楽しそうにしているのだけれど、

亜莉紗が「疲れるから座ろうよ」と、保健室で休憩を促すものだから、

文化祭という空間外で、いつも通りの穂ノ香らしい時間を過ごすはめになったためだ。


「文化祭つまんないよねー。授業よりかはマシだけど」

「だねー。」

「展示見て何が楽しいかちょっと理解できないよねー、保健室選ぶのが正解」

「あー、クーラーきいてるしね。」

生産性のない話を繰り広げる親友に、面白みに欠ける相槌を打ちながら、

イベントムードに張り切って塗ったキャラに合わないグロスを彼女は拭った。