それに比べてデキ婚は偉いなと思った。

いつも馬鹿みたいにはしゃぐのに、それは弱さの裏返しで、きっと毎日笑いたい訳ではないのだ。


デキ婚――いいや、お調子者、二組のお調子者は嘘つきだったのだと彼女は分かり、

どうしてか好きになってしまいそうだった。


それでも、周防穂ノ香の恋心は随分と前にある人物に渡してしまったままだから、

このときめきは偽りなのだろうと言い聞かせた。




「ごめん、ね」

目撃者、嶋に誤解をされてしまったはずだ。

あれはどう考えても、これから何かが始まる前だったから、

お調子者の根も葉も無い噂を真実に捩曲げるには最適であったため、どうしようと穂ノ香が思った時と、

二組の主役が走り出したのは一緒だった。


任せろと一言、嘘つきな少年は消え去った。

そうして廊下の奥から滅多に聞けない嶋の笑い声がし、大丈夫かと思った。


からっぽの教室。
そこは二組、夢の国。

もしかしなくても、穂ノ香は三組だから二組の生徒に頼むのではなく、

三組の皆で頑張らなきゃならないのかもしれない。


嶋が好きならば、きちんと現実と向き合わなければならないのかもしれない。


見上げた天井には、地方感丸だしの雨漏りのしみがあった。