保身に走れ!


そして、無免許運転を武勇伝にしたがるある意味果敢な三組の男子が、彼の評価をデタラメな噂で落としたがる一方、

高校生にナンパされたことを自慢しがちなませた女子は女子で、彼を陰で話題にしているのを、

地獄耳の穂ノ香は聞いたことがあった。


『普通にデキ婚かっこいよね』

『分かる、私デキ婚となら最後までアリだよ』

『どんなカミングアウトよーそれ、アハハ。でもアタシもデキ婚なら全然』

『ほらみ、自分だって。でもやっぱイケメンならオッケーってゆう女子のホンネ、やばいねウチら』

キャハハと高笑いをする派手グループは、いつだって『自分たちは皆より大人なんですアピール』に励む。


三組は三年生にもなってキスが未経験なんてダサいという見解だ。

そんなクラス、皆も誰も何も分かっていない。

デキ婚は生まれがコンプレックスで、小さな頃から心ない陰口に傷ついていることを。

顔が良い人は良い人なりの苦労があることを。



  デキ婚の癖に、か

  デキ婚なのに、……か

  オカマちゃん、ゴースト?

憧れと妬みを含んだ噂に信憑性はない。

大丈夫かと謝り、優しさで穂ノ香に伸ばされる手は、大切なお姫様に触れたことがあるのだろうか。

好きな男の子に好きな女の子がいるのかさえ知らない。


こんな穂ノ香でさえ片思いをしている今、あの嶋の癖に今、

少年は今、恋をしているのだろうか?


オカマちゃんにピアノを弾いてほしいと、彼が作る世界に一つしかない想いを聞いてみたいと心から思った。