正直に言おう。
学校から寄り道をせずに帰宅して塾で勉強ばかりの自分の生活は恥ずかしいと思う。
かといって、夜中に駅前で騒いでいたら補導されたと自慢する学年に何人かいる連中のような脳みそは痛いと思う。
それから、一生懸命文化祭の作業に取り組むお調子者みたいな真っ直ぐ精神もダサいと思う。
中学生というゲームでの最初に試されるキャラクター選びは難しいと、穂ノ香は思った。
決定ボタンを押してからは、携帯電話みたいにブラウザの戻るボタンが簡単に見つからなくなるのだ。
「帰ろーよ。今からならちょうど再放送ん間に合うし。亜莉紗ん家でテレビ見よ。ねー? お菓子あるし」
そう、制服を着ているならば、友達の悪い誘いを断るなど空気が読めない証拠で、
真面目な子は単純に融通がきかない頭がカタイつまらない人間だと呆れられ、
そうなると、十代は良心と葛藤するだけ無駄なのだ。
学生ノリをマナーや常識、ルールやきまりごとを武器に正論で壊すなんてナンセンス、
ヘルメットを被るのも合羽を着るのも第一ボタンまで閉じるのもタブーだとされる教室での正しい対処は、
「うん。時間もったいないし帰ろ」と、穂ノ香のように同調するのがベターだ。
つまらない彼女は、毎日がつまらない理由を周りの子がつまらないせいだと責任を皆に押し付けている己のつまらない根性を、
つまらない感性をしている故に知らないのである。
これこそが、受け身な生徒が陥りやすい可愛いループだ。



