保身に走れ!

――――――――――
――――――――――


映画にカラオケ、ショッピング、海にプールにバーベキュー、田舎帰りに外遊び、塾にキャンプに遊園地、

近場から遠出、一通り夏の娯楽を楽しんだなら、明日何をして過ごそうか時間潰しに飽きがちな頃は、

読書感想文やら自由研究、残った課題の消化方法を考えないようにし、

中学生の大方は二学期へのカウントダウンを始めがちだ。


渡り廊下でネタバレを気にせず展示物の粘土を乾かす一年三組や、暗夜行路の道を選ぶ二年二組、

クイズ大会の予行練習に励む生徒会や、体育館でライト選びに慎重な三年一組、

一ヶ月後の文化祭に向け夏休み返上で、穂ノ香が通う学校の校舎は彩られていく。


三年三組の自主練メンバーには、とうとう本当に保守的な性格をした者しか残らず、

そうなると希望の歌は無音となり、遂にオルガンしか聞こえなくなってしまっていた。

一応、ステージに見立てた机や椅子には立つものの、そこから指揮者に従う生徒は居ない。


  あーあ。

先日、せっかくお調子者が茶化してくれたのに、何も意味はなく私語に埋め尽くされていく。

胸中で舌打ちをし、穂ノ香は嶋を眺めてみるが、枯れた心に片思いの魔法はかからない。


「ね、うちらも帰ろうか?」

右肘で親友をつつき、亜莉紗が面倒臭そうに言った。