保身に走れ!


イケメンは何をしても九割の女性からは許されると、穂ノ香は思っている。

現に、顔が良い奴ならば女遊びをしようがワイルドね☆と、好印象に解釈され、

ただ予習をしただけで意外と真面目なんだわ♪と、楽に好感度を上げてもらえ、

自己中心的なワガママなだけなのに俺様だわ☆と、胸キュンされ、

ボランティアをしただけで心が優しいのね♪と、イメージアップに繋げらてもらえ、


あげく、一人で歌い出す痛い行動をとろうが、『無邪気で可愛いッ』と、愛されてもらえるのだ。


なぜなら、今三組に居る影が薄い女子たちは確実にお調子者にときめいてしまっている。

その裏付けとして、告白をされた噂ならば、穂ノ香はたっくさん聞いた。

覚えている範囲で、彼は十四回想いを伝えられた経験があったはずだ。


もしも、彼女が彼のような性格をしていたら、嶋と皆と優雅に歌を歌えるクラスにできていたのだろうか。




胸が痛かった。
消極的で地味で大人しくて華がなくて冴えないキャラクターであることが恨めしかった。

もしも美少女だったなら、世界で一番に愛おしい人の隣で和やかに笑えていたのに。


「お兄ちゃん、おかし」

いつの間にか手を繋いだらしく、兄を先を引っ張る姿が可愛くて、

小さな子供の癒し効果に暗い気持ちが僅かに薄らいだ。

「ん〜? さっき食べたでしょー」

「おかし」

「四時になったらね。」

分かったと腕を広げる弟と抱き抱える兄を眺める嶋が秘かに笑うから狡い。

好きになるばかりだ。
やはり明るいリーダーシップがある人が三組に居ないからいけないのだ。
自分が悪いのではなく三組というメンバーがいけないのだ。


この片思いがいまいち優れない原因を、穂ノ香は一人でそう決めた。