学校の南に位置する公園には、青春を知らない小さな足音がライブアレンジされたリズムで零れている。
今朝、通り掛かった際に、確かに水まきをされていたはずが、
夏のせいで花壇の中は疲れてしまっている。
今、穂ノ香の教室は無人だと間違われるくらい無音だった。
それは、友達の結婚式に淡いドレスを可愛いからと着るような、ファミリーレストランで子供を可愛いからと野放しにするような、
ブログに知り合いの赤ちゃんの写真を可愛いからと載せるような、映画館で携帯電話を可愛いからと弄るような、
日常のあらゆる面で顰蹙を買うも、
周りの視線に気づかない無知で無恥なお子ちゃまが作り出す不快感に似ている。
そのような酷く白けた空気を、どうして本人は恥ずかしいと思わないのか。
自分の馬鹿馬鹿しいパフォーマンスに付き合わせられる人たちにどう思われるのか気にしないのか。
一人でアカペラを披露できる神経が理解できなくて、存在が謎だった。
痛いでしょう、格好悪いでしょう、どんな頑丈な心をしているのか穂ノ香には不思議だった。
「俺歌ヘタだからカラオケじゃ口説れないんとか可哀相だわ」と、
左の頬を膨らませる二組のムードメーカーである彼は、モテるのになぜ彼女を作らないのか。
普通、イケメンと呼ばれる男子は自分に見合った女子を横に置きたがる。
中学三年生になろうとも、ルックスが良いお調子者に恋人がゼロの事実が信じられなかった。



