一人でも何かしら喋る少年と、一人では何もしようとしない面子によるオーラの差はいくらなのか。
ハイキングの時に葉っぱの天井から落ちてくる光の筋を思わせる尊厳さを感じた。
「合唱。」
嶋の声は授業で当てられた時しか聞けない貴重な音色だったため、
雑食な穂ノ香は不覚にもときめいてしまう。
「三組合唱かー、三組、三組ってあれだな、サンサン〜爽やか〜、あ、ネタ通じる?」
彼の友達は誰だろう、もしかしなくとも一匹狼かもしれない。
何も動かない片思いだから、好きな人のことを何も知らない穂ノ香だ。
伴奏者と隣のクラスの奴を比較する前から気の毒な違いに、神様はなかなか人間に厳しいのだと知る。
愛くるしく中心に寄った目と一重でひらべったい目、子供らしくキュッと持ち上がった唇と乾燥している唇、
どちらの瞳に見つめられたいのか、どちらの唇にキスをされたいのか、
きっとそれは一目惚れと同じだ。
「ピアノ弾けるっていいなー、教室通わせやんと将来子供に教えてあげれんじゃん。……あ、嶋、お前モテるために始めたんだな、こす」
けらけらと軽く笑うのは三組と同じイジる工程なのに、二組の彼による笑いの場合はあったかく感じられる不思議。
例えば、彼が嶋を皆みたいにオカマちゃんと呼んだとして、けれどそれは誰かの耳に必ず愛を届けるはずだ。
どうして唇が動く時に快と不快の種類が生まれるのか、穂ノ香には分からなかった。



