……はあ、

落胆する穂ノ香は、去年クラスメート全員でカラオケに行ったことを思い出している。

あの日、塾がある子も他クラスの友達とデートの子も、早く帰って再放送のドラマをみたい子も親と予定がある子も、

皆が皆、教室全体で塗り絵遊びに夢中な少年にドタキャンを強制させられた。


全員参加となれば、勿論、人前でマイクを持つ行為に抵抗がある穂ノ香のような子も居たわけで、

そんな風に恥ずかしくて歌えない子にムチャブリをして意地悪に祭り上げず、

彼はリスナー組はドリンクバーの刑だと言い出し、盛り上がりの差が生まれないよう提案したのだ。


それは人前で歌えない引っ込み思案の穂ノ香にはありがたいことで、

『おかわりいる人ー』と自然に会話が生まれて、歌わなくても皆と絡めて面白かったし、

『氷入れるのダルイでしょ、一緒に行こ』と、明朗な子に話しかけてもらえて嬉しかった。



それから去年の今日は――嶋に片思いをしようが接点はなく、合唱コンクールが終われば指揮の棒を振らない穂ノ香を、

彼が見てくれることはなくなってしまうと切なく思い、

だから彼女は青春を頑張ろうとした。



『――あの!、』

それは告白の始まりだった。