誰かに恋バナをすれば発展する可能性があるかもしれないのに、

誰にもからかわれたくないからバレたくはないよう好きな人の話題を口にしたことがないのが、

保守的ガールにありがちな傾向だ。


そしてまた、想いを溜め込んだ先に何があるかを考えない点が恐ろしいったらない。



好きだった。
少年より素敵な人なんか存在しないと思えるくらい、穂ノ香は学生を代表する片思いに溺れていた。


男子と気軽に絡めるのは可愛い子や美人という外見に恵まれた人たちと、

派手な見た目でノリが良い人たち、リーダーシップがとれる活発な人たち、オシャレで人望がある人たちで、

中にはパンチがきいたフェイスでも、ユニークなキャラクターで慕われている子も居るには居たが、

周防穂ノ香という人間は顔も優れていないし性格も引っ込み思案で全体的に華がないため、

クラスの中心が似合う子たちのように積極的にコミュニケーションがとれなかった。


ルックスコンプレックスなのか自己保身ナルシストなのか、とにかく現状維持しかできずにいた。


窓の外に広がる夜空には分厚い雲が覆われており、まるで憂鬱な三組の教室にそっくりだった。

そしてまた、ため息の量が努力をしない度合いであった。