外見に自信がなく、可愛くない自分なんかが恋をすれば、

たちまち噂にされ笑い飛ばされるであろう未来が憂鬱だったせいと、

すすんで他人と関われない自他とも認める引っ込み思案なせいで、

穂ノ香は誰かを好きになるきっかけさえないと、どこか青春を諦めていた。



けれども、ギャップの影響力により、とある少年の魔法により仏頂面で冷たく女に靡かないあの嶋が笑った瞬間、

あっさり恋に落ちていた。


普段、口角が下がっている彼の笑顔はすさまじい破壊力を持って一人の乙女を片思いの国にトリップさせてしまった。



――となれば、中学生のキャッチャーな恋愛話なのだから、

この場合ちょっぴり冷たい愛しの彼に弱みを握られ恋人のふりをするよう強制されたりとか、

子供の頃、交通事故に遭いかけたところを助けてくれた小さな男の子が実は彼だったりとか、

なにかしら距離が縮まるラブハプニングに見舞われる?



――残念、リアルな世界を生きる十五歳の穂ノ香にとって男子は遠い遠い遠い遠すぎる存在で、

簡単な『おはよう』を言うきっかけさえなかった。


恋をしたイコール世界がキラキラに変わる訳ではなく、ただ黙って大人しく流れに身を任せ毎日をやり過ごすしかできなかった。