脂肪に埋もれた豆粒みたいな目を細め、あの船場の癖に威圧してくる態度に腹が立った。
いいや、あの船場の癖に、人気者のあのお調子者にしつこく片思いを続けていることが許せなかった。
そう、彼女は穂ノ香が真面目に嶋を好きだと信じてきた歴史を壊した張本人なのだ。
なんでブスなのに
船場さん不細工じゃん
三年三組で散々意地悪をされた癖に、それでも自分の心に真っ直ぐな初恋を貫くから、
だからだからだから、穂ノ香はずっとずっとずっと船場が大嫌いだった。
非常口の看板やパーティー料金表のポスター、ラックに置かれたQRコード付きのフリー雑誌や酔った客をカモにしたガチャポン、
ごちゃついたフロア中央は出会いを求める若者がちらほら漂流している。
中学を卒業して、高校生になって、もうすぐ高校さえも穂ノ香は卒業してしまう。
今、未来、過去、御託を並べて一人考え事をする時間に、誰かと会いたくなったなら、
頭に浮かんだその人が、きっと自分を高めてくれる利用価値のある人物だ。
オカマちゃん、
デキ婚、……ゴースト?
初恋、片思い、告白、か
世の中にある言葉自体には、深い意味がないと思う。
誰の音をしているかで、感情が生まれるのだと思う。
だから片思い中の少女は、大好きな少年の声を聞きだかる。



