他人にしては僅かに縮まった距離感に、人は心を許しているのだと視覚からまず知るものだ。
上目遣いに顎を引き少年を見つめる姿で、積極的に好きなのだとすぐ分かった。
高校生になれど、中学社会で築かれた法律は変わらない。
イケメンには美少女しか似合わない。
美少女だからこそイケメンが似合う。
そう、素敵な王子様の隣で和やかに微笑む権利は、お花畑で踊るお姫様にしか許されていない。
つまり、キラキラ輝くお調子者と陰気な嶋ならば、穂ノ香に相応しいのは後者であると随分と前に世間一般決まっていた。
不細工男に慕われたり可愛くない子に好かれたりすれば、迷惑に値するため、
間違っても前者に告白をしてはいけない。
内面の豊かさや性格の良さが魅力だと信じるなど甘えだと、三年三組だった少女は恋愛ルールに従って生きてきた。
それがどうして?
「――……ふなば、さん?」
自分と同じく活気に欠ける派閥の女子が、彼女面でこちらを睨んでくるのだ。
ルックスを気にしないその勇気に困惑してしまうし、ポジションに負い目がなさそうなその身の程知らずさに笑えてきてしまう。
「周防さん?、二人で何してるの?」
デキ婚の前だから媚びた音色でダルマがゴーストに嫉妬してきたと、
船場に苛立ち、穂ノ香は睨み返した。



