例えばの話。
吸いかけの煙草とからになったワイングラスが飾られたサイドテーブルの右にあるダブルベッドへどっぷり埋もれている時。
『で? 同窓会はどうだったわけ?』
『……あの人には会えたのか会えなかったのか、私、知らないの』
『ふうん、』
指でなぞる好きな人――遡って自分たちのことをもう一度思い出してみる。
あの時は知ることがなさそうな未来に焦っていた甘ったるいキスをくれる恋人の腕を避けて。
そうして蘇るのは清潔で幼く脆い記憶。
それが純愛物語なら素晴らしい、合格だ。
――――いつかの未来、同窓会を楽しみにして、卒業式にかつての自分たちはきっと仲間にさよならの手を振ったのだろう。
指の隙間から光る別れをまだ知らない幼さが武器だったはずだ。
テンションを間違えた団体客は音痴の雄叫びとクオリティーの低い合いの手、無意味な野次と雑談がノリよく廊下へ放出させる。
カラオケは何を歌うかより誰と行くかという元に、きっと青春臭い意義がある。



