「二人きりであーやしいな! 同窓会で久々の再会、燃え上がる恋心を抑えられずお二人さん抜け出す気か?」
滅多に誰も使わないであろう階段に出現したのは、
貴重な同窓会なのに仲間を蔑ろにし、別に緊急の用事でないだろうに外と連絡をとりたがる携帯電話で空気を読まずにお喋りをしている男子生徒だ。
彼は穂ノ香が忘れもしない最大の敵、三年三組を牛耳る厭味なツートップの片割れだ。
今、彼女の目の前に居る二名は、中学時代の給食エプロンみたいな人と画鋲みたいな人だった。
そう、嶋をオカマちゃんと呼び、嘲笑ってばかりの同じクラスだった奴と、
嶋をピアノマンと名付け、馬鹿笑いばかりの隣の組だったお調子者。
二人は学生アングルでは目立ち明るい同じグループだけれど、青春に対する価値観が正反対だったと思う。
「なによ、周防さんナンパしてたんか? 美少女彼女にチクるぞ?」
絡んできた男子に、「あはは、そりゃあ勘弁を。ヘタレな俺は彼女が怖いんだ」と、お調子者が昔と変わらず陽気に笑う。
デキ婚というあだ名をネガティブに気にする訳でもなく、毎日ニコニコ過ごす性格で、
ルックスも総合で中学一番魅力的だった彼に恋人がいるという事実を聞き、
嶋を好きな穂ノ香は、なぜだか悲しくなっていた。
かの、じょ、……?
当然じゃないか、顔もスタイルも良いし内面も優れた人物にガールフレンドが居ない方がおかしい。
それなのになぜ見えない存在に嫉妬しているのだろうか。
なぜかお調子者が恋愛をしていることを許せなかった。



