あれから1週間経ち、今は涼しい風が吹く10月に入った。


学園祭のお陰で前より少しだけクラスの子と話せるようになった。


「秋本さん。学園祭で葵様と回ったって本当??」


ーギクッ


そう聞いてきたのは、安田理穂さん。


名前だけ聞くならどこにでもいそうだけど、家は大手化粧品メーカーだから安田さんは令嬢で普通じゃない。


「どうしてそんなこと聞くの?」


なるべく落ち着いて答えた。


「学園祭で高澤くんと一緒にいた子を見たっていうのを聞いたから。役員を一緒にやっていたから、そうかなって思って。」


安田さん、勘が鋭すぎる…。


「そんなはずないよ?だってユリは私と一緒にいたから。ねぇ?ユリ。」


後ろからスッと夏菜が助け船を出してくれた。


「う…うん!私、一回寮に戻った後、夏菜と合流したんだ。」


「ふーん。なんだ嘘だったのか。」


ちゃんと納得してくれたのか、安田さんは面白くなさそうな顔をして、私の席から離れた。


「夏菜....。助けてくれてありがとう。」


夏菜は当然って顔をして私の頭をポンポンと叩いた。


「ねぇ。今日さ、授業を部屋で受けてみない?私も特権が使えるなら使ってみたいんだ。」


「いいよ。」


学園祭終了後の成績発表では、夏休み前と比べて成績が上がった子もいればものすごく落とした人もいた。


夏菜はトップをキープしている。


その証拠に肩にかかっている髪の間からチラリと金色のバッチが見えている。


「じゃあ寮に戻ろっか。」


「玲央はどうする?」


「置いていこ。だって玲央まで連れてくとユリが危険かも。今までもそうだったでしょ?」


「そうだけど....。」


「大丈夫。玲央はそれを十分承知してる。....っていうかむしろ自分を責めてる。

ユリをいつも守れてない、失格だなってね。」


私のことなんて....。


玲央が不意にこっちを見た。


ん?


メール?


“俺のことは気にすんな。お前の執事でもあるんだから守って当然じゃねーか”


「玲央....。」


いつもありがとう。


そう心につぶやいて夏菜と一緒に教室を出た。