「ユリ。」


もう一度名前を呼ばれたと思ったらふわっと抱きしめられた。


優しい香りがする。


「高澤くん....?」


「葵でいい。」


「え?」


「名前で呼べ。」


な...名前で?


なんか恥ずかしくなって顔が真っ赤になる。


「あ....葵?これで....いい?」


「いい。これからもそうしろよ。」


温かい温もりに不安に煽られていた心が落ち着くようになった。




-ポタっ


「お前....泣いてる?」


「わ...分からない...。なんでこうなったのか....。」


そう言うとパッと私を離した。


よくわからないけど急に寂しくなった。


だから私は言ってしまった。


「葵....。」


「どうした?」


そっと後ろから抱きついた。


「お願い....もう一度....。」


葵が少し首を後ろに曲げる。


「....わかった。もうそんな顔するな。泣きたい時は泣けよ。」


さっきの体勢に戻してくれた。


「ありがとう.....。」


自然に涙が溢れ出た。


私はそのまま寝てしまった。