一人では十分に支度できなかったため、屋敷のメイドさんの助けを借りて、ワインレッドのワンピースに着替える。


車椅子を押してもらい、集合すると決めていた食堂に向かった。


遠く離れた席にシルバーと国松さん。


私の横には理央。


「ユリさん。結局あまり良い思い出ではないダンスパーティーになったわね。」


「しょうがないです。私がもっとちゃんとしてればよかったんですから。」


はぁと一つため息をついて右手を額に宛てたシルバー様。


「あなたはもっと人を頼りなさい。特に葵なら大丈夫よ。」


「葵ですか?そんな.....私は.....。」


「ユリさん気づいてる?葵は....ユリさんのこと好きなのよ?女の勘ってやつだからあてにならないけど。」


は?


「え…まさか。なんで私なんかの庶民を。」


「あなたは庶民なんかじゃないわよ.....。」


「なんかおっしゃいました?」


「いいえ。何もよ。」


ありえない話だ。


葵が私のことを好きなんて。


何の取り柄もない私のことを......。


「そのうち気づくわ。」


そう言いシルバーは紅茶を一口すすった。


一つ一つの動作がお上品。


私もこの学園で生活している限り真似しなきゃいけないよね。


「ユリさん、そろそろ授業時間ね。国松、さっきの部屋にモニター出して。」


「そんな....いいです!私、帰ります!」


「だめ。これは学園長命令。」


「はい…。」


そんなことを言われたら言い返せない。


その日私はちゃんとシルバーの言うことを聞いた。


シルバー様が学園の医務担当であるジャックではなく、シルバー様専用の医者を呼び出してくれた。


あと、世間で評判の心理学者も。


結局屋敷に1週間滞在させてもらうことになってしまった。